産業発展過程を製品の設計思想からひもとく

今日の日本経済新聞(29 面)の"経済教室" には「技術経営論からみた電気自動車 - 設計ルール共有に備えを」という、香川大学の柴田教授の論文が掲載されていました。

内容は電気自動車の話なのですが、これをパソコンの歴史と重ね合わせて考察しています。簡単に整理すると、次のとおり。

  • 電気自動車は主要部品の相互依存関係が簡単になるので、モジュール(組み合わせ)化が進展する。例えばパソコンは、主要部品を市場から調達して組み合わせることで完成品ができる。
  • その対極に位置する乗用車は、インテグラル(すり合わせ)型である。部品の組み合わせだけでなく、部品同士の微細な調整とすり合わせが必要となる。

ここでは電気自動車が語られていますが、私は同じ論調をソフトウェア開発にも適用できるのではないかと感じました。
同論文の中で、次のような指摘があります。

一般的に、産業発展過程を製品の設計思想からみると、インテグラル型に一時的に逆シフトしながらも、全体的に設計合理性が高いモジュール化の方向に向かう。そしてモジュール化の実現には、主要部品間の連結方法を規定するデザインルールを見出す必要がある。だがそれは容易ではない。モジュール化とは、分割さえすれば良いというわけではなく、保守性や拡張性などを考慮にいれてルールを設計する必要があるからだ。

このようにモジュール化への進展度合いは、製品の複雑性と、複雑性をひもときデザインルールを見いだせる企業の組織能力とのバランスで決まる。

Wagby の歴史は、まさにこの視点です。業務アプリケーションをモジュールとして捉え、各モジュールの連結ルールを考え続けてきました。その際、動けばいいではなく、保守性や拡張性を見据えた機能拡張を意識してきました。これは「デザインルール」といえます。

この論文が産業発展の一般的な過程をうたっているため、ソフトウェアの工業化も例外ではありません。繰り返しの主張になりますが、Wagby が実現しようとしている世界は、大きな、正しい流れに沿っています。ソフトウェア開発かくあるべし、を実践しているのが Wagby なのです。