内製開発のメリットは、失敗できること

秋はイベントの季節です。最近参加した BPIA 目からウロコの「新ビジネスモデル」研究会(10/17)『デジタルを斬る!!』パネルディスカッションで、びびっときたものがありました。

第115回 目からウロコの「新ビジネスモデル」研究会(10/17)『デジタルを斬る!!』パネルディスカッション | BPIA – Business Platform Innovation Association – 人を元気にする舞台を創る

"(ユーザーによる)内製のメリットは、失敗できることではないか。"

システム開発を外部に委託するということは、発注側であるユーザーに完成イメージがあるということです。ところで今、多くの企業が取り組もうとしている「自社ビジネスの徹底したデジタル化 = デジタルトランスフォーメーション」は、完成イメージが漠然としており、全社的に自社ビジネスモデルの再構築という視点で試行錯誤しています。エンタープライズな領域(いわゆる基幹系)も、この流れに巻き込まれつつあります。

そのためアジャイル的なアプローチで短期間で試験品を用意し、お客様を巻き込んだ実証実験を繰り返しながら、自社の強みを再発見するというプロセスが求められています。これを一括請負型で開発委託することは、現実的ではありません。

私見ですが、このようなプロセスでは試行錯誤の最前線にいることで、よいアイデアが生まれてきます。試しては失敗し、失敗の連続の果てにようやく何かが閃く、というようなことは研究分野ではよく知られてきたことです。これと同じアプローチを、ビジネスモデルの再構築としてやっていく時代です。だから内製しかない、という視点は私にとって納得感がありました。

仮にこれが外注扱いであれば、最初から失敗を織り込んだ予算など計上できるわけがありません。請け負う方も無難な対応をやらざるをえず、結局は中途半端なシステムができておしまい、ということになりかねません。壁を突破するためには、鋭い切り口(アイデア)が求められますが、それは失敗の中からようやく現れるのです。

ちなみにこれは「無駄」とは異なる概念です。テクノロジは無駄をなくすことができますが、試行錯誤というプロセスは無駄ではありません。試行錯誤は辛いものです。いつ結果がでるかはわかりません。そこに投資するというのは経営判断です。

そして、ここでいう「内製」は、必ずしもユーザーがプログラムを書くという意味ではありません。しかし超高速開発ツールを導入して、開発の一翼を自分たちで担うことは可能です。専門家との分業でなく協業という形で内製チームを結成することが成功のパターンになる、と考えています。

では SIer のメリットは何か

そして先週、超高速開発コミュニティ モデリング分科会で合宿研修がありました。

10月21日 超高速開発コミュニティ モデリング分科会主催合宿イベント

テーマはモデリングですが、夜遅くまで、システム開発全般について参加者で激論が交わされました。その中で印象に残ったのは「超高速開発ツールを導入する、SIerのメリットは何か?」という問いでした。

多くの意見がありましたが、私がもっとも納得したのは「SIerのメリットは、ない。」というものでした。過激に思われるかもしれませんが、正確には「多重下請け構造と、大人数開発を維持することを前提としたビジネスモデルは、超高速開発ツールと合わない」ということです。

ユーザー企業による内製の取り組みは、単なるコスト削減にとどまらず、自社のビジネスモデル再構築とセットで進んでいくのです。その潮流に SIer も「乗っていく」ことが求められており、それは「大人数による一括請負」から「少人数でユーザー企業に寄り添うSIに変わる」というのが私の意見です。SIerを雇用吸収の場として捉えるのは、もう終わりにしましょう。その視点でみれば、SIとはとても有意義で、人生を賭けられる仕事です。