「13歳のハローワーク」

長女が学校の図書館から借りてきました。以前から興味があった本なので、SE やプログラマという仕事を説明しようと思い、その章を読みましたが... 著者の村上氏の洞察力に唸ってしまいました。この本の初版は 2003 年ということなので、もう 6 年前になるわけですが、当時すでに我々の業界がもっている本質的な問題点を突いています。以下、少し引用します。

プログラムが書けるというのは、体力とか、腕力に似ています。ほかには何もできなくても、プログラムさえ書ければ、とりあえず今は仕事はあります。しかし、今でもすでに、ほとんどの SE の仕事というのは、一日中同じ形に積み木を積み重ねているような単純労働です。(伊藤譲一氏のインタビュー)

IT も、労働コストの面で、中国やインドに、もうかなわないわけです。だから、SE のような単純労働ではなく、本当はもっとクリエイティブな部分に、子どもや若者の興味を向けるようにしないといけないと思います。(伊藤譲一氏のインタビュー)

政府は、IT(他にバイオなども)に雇用の創出を求めているようだ。かつて高度成長のころ、新しい産業が次々に誕生し、大量の雇用を生み出した。(中略)高度成長時代、たとえば溶接工は、工業高校を卒業し、比較的短期の研修を経て、すぐに造船などの現場に送られ、そこで腕を上げ熟練者になると、社会的・経済的に「成功者」になることが可能だった。そういった工業化時代の刷り込みが、IT に限らず、バイオやナノテクなど新産業に大量の雇用創出を求めるという時代錯誤を生んでいるのではないだろうか。

製造業は労働力の安いアジアに生産拠点を移しつつあるが、その傾向が変わることはないだろう。そういった経営は、非熟練の若年労働力を基本的に必要としない。つまり、たとえば造船業における溶接工のような労働力は減り続けるということだ。

13歳は、IT で大量の雇用創出、というような誤った情報にだまされてはいけない。IT がブームで、これからは IT の時代らしいから、大勢の労働力が必要になり、自分はそういった企業に就職すればいいだろうというような、甘い夢を見てはいけない。それは、完成した高速道路の上で、行き交う車を見ながら、道路建設の働き口を探すようなものだ。いいことか悪いことかは別にして、より質の高い知識と技術がなければ労働者として働く場所がないという、ミもフタもない時代がすでに始まっている。

ところで私は、13歳のときにソフトウェアの世界に身を投じることを決めました。その理由は(当時在籍していた)中学校にはじめて入ってきた PC-8001 の世界に魅了されたからです。プログラムを書くことが好きでたまらず、美しいソースコードを読んでは感動しました。常に新しい発見があり、それは今でも続いています。それだからこそ、この業界の「人月制度」「ヒト派遣ビジネス」に大いなる違和感を感じています。

1998年に、沖縄県がマルチメディアアイランド構想で IT を重視する政策を打ち出したときは喜びました。しかしその後、政策の本質は IT 業界への大量雇用を期待していることを知り、ここでも違和感を感じました。実際、コールセンター業務を IT に括ったことで、IT による雇用改善の面目は保たれましたが、SE・プログラマという分野では苦戦しています。

著者の村上氏の意見は厳しいですが、本を通して伝わってくるのは「ブームに流されず、本当に一生を捧げたいという思えることを仕事にしよう」という主張です。私としては、コンピュータが好きで、プログラムの美を感じる若者に、是非、この業界を選んでほしいと思っています。単純労働ではない、とても創造的で、未開拓の分野は、まだ残されているのです。

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