トヨタもソフトウェア企業として進化する

プリウスのブレーキ問題は「不具合」なのかどうか、この判定に悩むことが、トヨタ首脳陣がハードからソフトへのパラダイムシフトという洗礼を受けているのだと解釈しています。

マイクロソフトという巨大企業でも OS に混入する不具合を根絶することはできませんでした。その代わり、社会に受け入れられた代案は「パッチ」と呼ばれる修正プログラムを随時、提供することでした。ソフトの不具合をゼロにするという取り組みはゴールとして掲げることは重要ですが、現実にはパッチという仕組みを受け入れることで IT 社会は成立しています。もし、不具合を完全になくしてから出荷しなければならない、となった場合は、どの企業も製品を出すことは困難になります。

大きな流れでは、自動車のソフト化は避けられません。私はトヨタがこれからソフトウェア企業になる、と理解しています。不具合修正の提供方法をはじめとして、この分野でもトヨタがリーダーシップを発揮することになるでしょう。(もしそうしなければ、まったく別の企業が自動車業界のリーダーになることもあり得ます。)

この「バージョンアップ」問題については、PC や携帯ではすでに一定の方法(インターネット/通信回線を使った提供と、モジュール化による随時取り込み)を確立しました。自動車や各種家電製品においては、ここに新しいビジネスチャンスがあるように感じています。

例えば、デジタル放送でテレビに受信させ、それを WiFi 経由で自動車および家庭の家電製品に送り込むというのはどうでしょう。各端末が個別に携帯電話網を使って通信させるより効率が高いはずです。産業界全体でプロトコルを設計すれば、これを世界標準として使えるのではないかと思ったりします。