創立 10 年目を迎えて

この 3 月をもって、当社は創業 10 年目を迎えることとなりました。
起業のときに、「10年継続する会社は、全体の数パーセント」という話を聞いたことがあります。この 1 年もまたしっかり成果を出し、来年の今頃に 10 年間の重みを社員および関係者の皆さんと分かち合えるよう、気合いを入れてがんばっていこうと思います。

さて、10 年間の総括を行うには 1 年早いのですが、思うところがあって簡単に振り返ってみます。

当社の社歴は大きく二つの流れがあります。
創業から最初の数年は、受託開発が主でした。少ない知り合いの方から定期的に仕事の依頼があり、特に営業しなくとも良い仕事に恵まれていたと思います。
その間、パッケージソフトの開発にチャレンジしていました。

後半の数年は、会社そのものを受託からパッケージベンダーへと変化させました。
あえて受託を断ることもありましたが、社員の技術ノウハウを結集して一つの「形」をつくることに、こだわりました。
複数のパッケージソフトを発表したのですが、現在は Wagby という製品に社内資源のほとんどを投入しています。多くのお客様に支えられ、社員の意識も確実に "パッケージを開発している自分たち" というように変わってきました。

しかし、販売実績は当初計画よりも伸びていません。増えていることは事実なのですが、ぐっと伸びていくような、爆発的な広がりという体験ができなかったということです。

これを総括すると

  • 売るものをつくることはできたが、
  • ビジネスモデルをつくりあげることができなかった

10 年であったと思います。

当初、私が計画したビジネスモデルとは、昔からあるパッケージソフトのライセンス販売です。しかし、このモデルは今、大きな岐路に立たされていることは周知の事実です。

一つにはパッケージソフトに代わる SaaS が登場したことがあります。また、クラウドという時代が幕を開け、技術体系が大きく変わろうとしています。加えて日本全体を覆う不況感が払拭されず、システム開発の新規案件は停滞したままです。このような環境の下、これまでの売り方ではお客様の心に届かなくなっており、時代に対応したビジネスモデルの構築が急務です。

当社も含め、多くの企業が、この「新しいビジネスモデル」を模索しています。最近は、ビジネスモデルとは呼ばずに「生態系」や「エコシステム」と表現するようです。一社が伸びるのではなく、関係者すべてにメリットがあり、かつ、ビジネスに流れ(循環)をつくることで、より規模の拡大が可能になるという構図です。グーグル社やアップル社といった欧米企業のモデルが模範となっており、日本企業は苦戦しています。

しかし私はずうずうしくも、この状況を楽しみたいと思います。

私は「変化の波に自分から飛び込めるような生き方をしたい。」と考えて創業しました。サラリーマンであれば、組織の論理に従わざるを得ませんが IT 業界のように何度も大波が到来する分野では、組織に守られるよりも自分から飛び込む方が何倍も面白いのです。変化の最先端には、常にビジネスの芽があります。この嗅覚を磨くこともまた、会社経営の醍醐味です。

当社にとって、次の 10 年をどういう立ち位置で臨むのか。まさに今、それを決める時です。

日本全体を覆う不況感の根本に、失敗を恐れて決断を先延ばしにする風潮があると感じています。しかし人生も経営も同じで、何かを得て、何かを捨てるという決断を常に行うことです。慌ててもだめですが、待ちすぎてもいけない、そして、決めることに躊躇してはいけない。

そういう選択をできるチャンスがあることに感謝と、責任を感じています。次の 10 年をどう進むのか、この 1 年の経営で、再び基盤づくりを行おうと考えています。