「DXレポート2」でいろいろ思うこと

さった4月23日、ローコード開発コミュニティ 第8回総会・記念講演会が無事に終了しました。今年も引き続き当コミュニティ幹事として運営に携わることになりましたので、よろしくお願いします。

さて今回の記念講演会は、業界に関わる人なら知っておきたい「DXレポート2」について、実際に取りまとめに関わっていらっしゃる株式会社クニエの井出 昌浩 様にご登壇いただきました。貴重なお話をお聞かせいただき、あらためて感謝申し上げます。講演資料ならびに当日動画を、コミュニティ会員限定でシェアしています。興味ある方はこれから会員になっていただいて、是非とも閲覧ください。大事なことですが、会員登録は無料です。無料です。本当に無料です。お申し込みはこちらからどうぞ。

ローコード開発コミュニティ

講演会の聴講で、いろいろ思うことがありました。今回、この話を書きます。

DXレポート初版の公表から2年、日本のDXはまったく進んでいないという現状

約500社へのアンケート結果では、95%が「まったく取り組めていない(DX未着手)」または「散発的な実施に留まっている」という状況が浮き彫りになりました。何をどうしたらいいか、という受け止め方もばらばらで、単にレガシーシステムを更新すればいいといった誤解も見受けられるとのこと。この詳細は、当日の資料および発表動画に譲ります。

DXの定義から再考する

「経済産業省DX推進ガイドライン2018年12月」の定義は次のとおりです。

  • 企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、
  • データとデジタル技術を活用して、
  • 顧客や社会のニーズを基に、
  • 製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、
  • 業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、
  • 競争上の優位性を確立すること。

これができていない、ということは、現実は次のような状況にある、と推察します。

  • 企業はビジネス環境の激しい変化を実際には感じていないか、あるいは見ないフリをしていて、
  • 正規化された(再利用可能な)データが手元にあるわけでもなく、
  • デジタル技術の活用どころかリモートワーク環境整備ひとつとっても右往左往しており、
  • 顧客や社会のニーズの前に、業界の慣習をはじめとする供給側(企業側)の都合を優先せざるをえず、
  • できるだけ自社業務フローを変えずに、
  • 現経営陣が確立してきた企業文化も温存しつつ、
  • 競争上の優位性を、外注化その他のコストカットという解釈で乗り切ろうとしている。

その上で、あらためて「DXする」を再解釈します。

  • 自社都合や業界の慣習をすべて「ない」と仮定した上で、
  • 100%顧客目線、将来世代の社会からの要請目線で、あるべき事業形態をゼロから再設計し、
  • 再設計の中でデジタル化されそうなものは必ずデジタル化されるという仮説を積極的に取り入れ、
  • デジタル化できない(= 人手がかかる)領域に自社の優位性を集中させ、
  • 優位性がだせない部分は他社との連携、それもデジタル的な連携を視野に入れ、
  • このような新しい解釈のもとに組織を作り直す。

こう捉えると、これまで日本企業がとにかく避けてきた「業務フローの再設計」から逃げることはできない、と改めて気づかされます。基幹システムの再構築が必要という議論も、この文脈の上で語るべきであり、単に老朽化したシステムを(業務の見直しなしに)作り直すということではありません。

ノーコード/ローコード開発との関係

DXとノーコード/ローコード開発の関わりは一つだけです。「作り直しに強い」。手早く作ってすぐに新業務フローを開始できること、業務フローが変わってもすぐに作り直しできること。そのような環境を自前で持たないと、DXへの期待感、スピード感を支えることはできません。

残念ながら、ここもまだ共通理解に至っていないテーマです。これまでの「一品もの手作り基幹系システム」を「早く、安く、つくるための一回限りの開発ツール」として捉えると、ノーコード/ローコード開発を使いこなすことはできません。開発時にすべての要件を盛り込んだ、過剰品質の UI を作り込んでしまえば、あとは保守サービスを受けずに何年も同じシステムを使い続けるという発想では DX 時代の基幹システムとは呼べない、ということです。

さらに、この手の便利そうにみえるツールは定期的な流行があって、そのうち消えてなくなるので無視していい、という声も一定数あります。だからといって古い技術をベースとした基幹システムを10年以上お守りするのかというのもまた疑問ですし、Wagbyでいえば15年経過して、安定した顧客層に支えられてまだまだ元気です。さらに、私の知っているいくつかのツールはソースコードではなく、そのメタレベルの「設計情報」がテキストファイルで構成されているため、仮にあるツールが End Of Life を迎えても、この設計情報をベースに新しいツールに引き継ぐことも可能になっています。これは古いソースコードの移植や再作成より、ずっと現実的に思えます。ツール個々の流行はあるかも知れませんが、ノーコード/ローコードの潮流は続くと思います。

まとめ

ということで DX2 レポートから現状の課題が山積みなこともわかりましたが、一方で、これを乗り越える企業は必ず一定数、でてくるという楽観的な発想をもっています。

天は自ら助るものを助く、ということわざにもあるように、やるべきことを自分のペースで着実に進めていく企業が、振り返ってみると DX ってこういうことだったのかと自覚する、あたりが正解のような気がします。そしてそういう企業は、自社に適したノーコード/ローコード開発ツールでこれまた違和感なく内製していることでしょう。