「国内で絶好調の外資系IT企業」記事から読み解く、ITビジネスの潮流

日経コンピュータ2013年5月2日 Close Up 記事の内容は、国内のSIerやパッケージベンダにとって気になる内容ではないでしょうか。日本オラクル、日本マイクロソフト、SAPジャパン、セールスフォース・ドットコムなど著名な外資系企業の業績が極めて好調というレポートになっています。日本は経済低迷がずっと続いていると言われていましたが、そのような環境でも外資系企業の日本法人は二桁成長している、という内容です。さらに興味深いのは、ベンダー本社は日本の二桁成長の理由がわからず困惑しつつも、最低限の投資で収益が上がる「金のなる木」として日本を位置づけているということです。

記事中ではその原因として、次の点を挙げています。

  • ネットワークやデータセンターへのITインフラ投資。(ただしこれだけでは多くの外資系IT企業の業績好調は説明できず、実際にシスコシステムズのコメント「通信事業社以外の分野もバランス良く伸びた」も紹介されています。)
  • 国産メインフレームやSIのレガシー市場の一部が、外資系IT企業がもつグローバル標準製品に置き換わった。(大企業を中心にグローバル化し始めた)

これらの現象から、私なりの解釈を行ってみました。

日本独自のカスタマイズ文化が見直されつつある、というのは本当か

日本で多くの大企業が最初にSAPを導入したとき、カスタマイズ費が(他国に比較して)突出していると話題になりました。それから10〜15年を経て、ERPを導入した各企業も海外ビジネスの経験を積んできました。その結果、日本固有の独自性よりグローバル標準を使った方がいいという判断に傾いた、という可能性はありそうです。

しかし記事中には述べられていませんでしたが、私はパッケージの採用を後押ししている、もう一つの視点があるのではないかと考えています。それはパッケージそのものの品質(機能や使い勝手)が大きく向上してきたことです。従来は「明らかに不足しており、カスタマイズしてでも実現しなければならなかったこと」が、現行版では標準となっているため、カスタマイズしなければならない割合が減っているという可能性です。

後者の理由が「正」とすると、パッケージベンダにとっては追い風です。パッケージの良いところは、さまざまなお客様の要望を取り込んできた努力が、他のお客様向けに再利用できることです。一度、そのサイクルが回り始めると、口コミ効果が期待できます。そこに至るまでが大変なのですが、そのサイクルに入れば安定収益路線になります。

つまり日本市場が「最低限の投資で収益が上がる」ようになったのは、それまで着実に行ってきた製品改善が実を結んだということです。日本市場はこれまで要求過剰と言われてきましたが、その品質に近づきつつあると解釈することもできます。これは日本国内のパッケージベンダにとっても同様に、そのレベルに達するまで頑張ろうというモデルにもなりえます。

パッケージが主力となる時代のビジネスモデルを考える

本記事は次のように締められています。

これからは汎用的な業務には標準品を活用してコストを削減し、より戦略的な領域にIT投資を集中させたほうがよい。日本のユーザー企業や日本市場も "グローバル標準" に変わる必要があるだろう。

まったくの同感です。そして私の理解では次のようになります。

各企業とも基幹系の再構築というテーマは遅かれ早かれ、必ずやってきます。しかし再開発に対してはコストも重要ですが、特に新システムのカットオーバー時期を早めたいというニーズが強まっています。ビジネスのスピードはかつてないほど上がっており、つまり短期で結果を出すことが重要になっているのです。よってスピード重視から、できるだけ標準品を導入するほうがいいでしょう。とはいえカスタマイズしなければならない部分はゼロにはなりません。ただしこれまで日本で多かった「業務の特殊性」という視点のカスタマイズは(グローバル化によって)減っていきます。そして自社の優位性をアピールするためのカスタマイズは戦略的なIT投資として予算化されるということです。

今や"標準品"とはOSにとどまらず、インフラ(IaaS)やERPパッケージまで一気通貫して手に入るようになりました。この分野の標準品を供給しようとするプレイヤーは増えるでしょうが、標準品と対抗するような、特定顧客向けの新規開発という案件は減少し続けることでしょう。一方で、"戦略的な領域"は手作りであり、新規開発の重要なテーマです。このテーマは大きく二つに大別されます。一つは基幹系と疎結合である部分。スマートフォン対応マーケティングや、ビッグデータ解析などがホットなテーマです。これらはトライ&エラーという性格を有するため、小さな開発からスタートしたり、アジャイル的なアプローチが好まれます。もう一つは基幹系と密結合した、アドオン(カスタマイズ)な部分。このニーズに対しては「超高速開発」と呼ばれる手法で開発コストと納期を短縮させる取り組みがうまく適合します。特にユーザー部門が主体となってノンプログラミングでカスタマイズを行えるという製品への期待は、ますます高まるだろうと感じています。

私たちが提供しようとしている製品は、超高速開発を実現するものです。これまでその市場は「基幹系ではカバーできない、ユーザー部門独自の業務」の開発にあると考えてきました。今後はこれに加えて「基幹系と密結合した、アドオン(カスタマイズ)な部分をできるだけ早く手に入れたい。」というニーズも取り込む必要があります。この記事をきっかけに、改めてERPパッケージとの連携というニーズが今後、拡大するだろうというビジネスチャンスを意識しようと考えました。

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