Wagby Developer Day 2020 のテーマは「開放する基幹系」

今年の Wagby Developer Day 2020 のテーマは「開放する基幹系」です。本番イベントの前に、私がどういうイメージで話を組み立てているかを整理しました。

before DX

一般的な企業システムを取り巻く環境を図にしました。

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今回のコロナ禍に起因しますが、社内の基幹系を在宅勤務者が利用するには VPN を経由しますが、この帯域が狭いため、多くの人が一気に利用しようとすると使いづらいということがわかりました。

多くの企業は顧客向け ECサイトを運用していますが、基幹系との連携はシームレスではありません。

さらに問題なのは “対・企業(取引先など)” で、相変わらず紙、FAX、電話、メール、ファイル交換という状況です。2000年から20年も経っているのに何も変わっていません。嘆げかわしいことです。

after DX

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基幹系の再構築はひとまず脇に置きます。クローズドな基幹系は残り続けるでしょうが、一方でECサイトと業務処理が統合された公開系システムが充実し、旧・基幹系の一部を取り込むほどに成長します。

重要なのは基幹系(の一部)を API として外部に公開することです。顧客、企業、そして自社社員といったステークホルダーは、この API を通して基幹系すなわち組織の業務とつながります。私はこれを狭義のデジタル経済圏と認識しています。

自社APIはステークホルダーからみたときの(我が社の)業務そのものであり、かつ競争力の源泉です。これが「開放された基幹系」です。

多くの会社が API を提供することで、デジタル経済圏の規模は拡大していきます。これが次の図です。

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自社APIの公開と、他社APIの活用によるビジネスは加速度的に成長します。別の言い方をすると、この感覚についていけない会社は、新しい経済圏の枠外です。枠外であっても、もちろんやっていけるでしょうが、成長市場に足場を持たないということになります。

デジタル経済圏の発展は、予想外のビジネスを生み出すのではないかと期待しています。例えばブロックチェーンによる決済を行う企業同士で、ポイントが貯まるような仕掛けです。「ポイ活」は個人レベルで普及してきましたが、この法人版がでても違和感はありません。それはある種の囲い込みであり、参加企業同士のメリットがあり、ついていけない企業はますます取り残される世界です。

2020年時点で、ようやく FinTech を中心に、このような経済圏をつくろうという動きが本格化してきました。このタイミングで各業界のリーディングカンパニーは、率先して API の企画を練っていることでしょう。業界だけでなく異業種分野にも使っていただける API が登場すれば、この経済圏で有利なポジションを確保できます。ベンチャー企業は技術を提供することはできますが、リードをとる可能性が高いのは、やはり現時点のトップ企業でしょう。

Wagbyの使い道

Wagbyは3年前に R8 というリリースの開発計画を立てました。この時のテーマは「SoRとSoEの融合」でした。具体的には主にサーバ部分の強化として REST API 対応、オートスケール対応、マイクロサービス対応、OpenIDConnect対応、そして回帰テストシナリオ作成支援などに投資してきました。これらの要素技術はすべて API 提供のためのプラットフォームとしても活用できます。

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「基幹系は保守だけ行い、ECサイト運営は部門ごとに別扱い」という姿勢では、DX の実現は不可能です。そして、2030年を迎えるころには、基幹系の開放化に挑戦しなかった企業はデジタル経済圏でのプレイヤーとして良いポジションに立てていないと予想しています。自社ビジネスの API 化は業務の見直しなどとも絡むため大きなテーマですが、経営者にとってこのテーマを避けるのは10年後に禍根を残す、と考えています。

この続きは Wagby Developer Day 2020 でお話しします。今回はオンライン開催ですので、どうぞお気軽にご参加ください。


wagby.com