「リモートチームでうまくいく」を経営改革に適用する

ソニックガーデンの倉貫さんから、新著「リモートチームでうまくいく」を送っていただきました。ありがとうございます。

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倉貫さんのこれまでのブログから、リモートチームの概要は知っていました。それでも改めて一読すると、これは多くの日本企業で、自社の経営改革に使えるのではないか、ということに思い至りました。

まず私が注目したのは、表紙をめくった瞬間の、このコピーです。
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成果は個人のものではない。チームのものである。

私は創業当時から最初の数年間、成果と給与配分の理想的な在り方とは何か、について試行錯誤していました。そして(上のコピーと)同じ結論に至ったとき、すでに創業から10年余が経過していました。(少しだけ言い訳をすると、私が創業した当時、成果主義が一大ブームとなっており、私はこれを自社に適用することの難しさに直面していました。)自身の悩みがあった分、この一言には重みがあります。本書にはリモートチーム運営のためのさまざまな技法が語られていますが、この「成果をチームで共有する」という意識をもつことで、技法に魂を込めることができるようになる、と感じました。

経営改革に適用するメリットとは

多くの経営陣、幹部の方は、ピーター・ドラッカーに好意的でしょう。すると「知識労働」がいかに重要かも自覚していらっしゃいます。しかし一方で中小企業では、優秀な知識労働者の雇用は難しいと感じているはずです。

ずばり、リモートチームは、優秀な人材の獲得に寄与します。給与ではなく、働き方で魅力を出せることを、本書はわかりやすく説明しています。もちろん、現在、社内にいる人材が辞めずに、ずっととどまってほしい、という場合にもリモートチームの実践は有効です。つまり優秀な人材の獲得と定着化という、中小企業の大きな経営課題を解決できるのです。しかも追加コストはわずかです。給与を上げるのではなく、仕組みを見直すことで実践できます。

それなら我が社でも…ということで本書を一読したとき、これは「踏み絵」になる、と気づく人も多いと思います。20世紀型の労働者管理とまったく異なる哲学が求められるためです。具体的には「社内の情報をオープンにする」「時間による管理ではなく、信頼を土台とした自己管理にシフトする」「成果を見える化する」といったことです。当然、管理者の役割も変わります。トップによるコントロールから、自律型チームになり、人事評価方式も変わります。情報のオープン化が進むことで、社内の不正はゼロになりますが、東芝問題にあったような、その場しのぎの無理な指示というのは通りにくくなるでしょう。そのような体制変化によってはじめて、リモートチームはこの組織に定着し、真価を発揮できるようになるというのが私の所感です。

いきなりそこまでの変革は無理なので、まずは一部限定社員のリモートワークを認める方向で…という考え方はどうでしょうか。ここで「リモートワーク」と「リモートチーム」という言葉の違いがでてきます。リモートワークだけですと、どうしても組織から孤立しているという疎外感が拭えず、結果として優秀な人材の定着化に至らない懸念があります。この違いについては是非とも本書をお読みください。

私たちは信頼されたい、と願っている

私の理解の範囲ですが、リモートチームの本質は、会社組織に所属するスタッフ全員による、相互信頼という社内文化を育むことです。リモートというのは、相互信頼によって実現できる、働き方の一つです。相互信頼とは、例えばトラブルが発生したとき、この原因を誰かのせいにするのではなく、チーム全体で回復作業を行うことが当然という社内文化を指します。冒頭にあった「成果はチームのもの」というのは、「トラブル解決もチームのもの」と読み替えることもできます。

そして私たちは、自分は信頼されているという安心感の中で、全力で仕事に集中できるという特性があります。その結果、リモートチームがうまくいっている組織というのは、他社からみたときに驚くほどの生産性を実現できる可能性があるわけです。

そんな甘いことを、とお叱りを頂戴するだろうと思いつつ、もし私が社員という立場なら、リモートチームを実践する会社とは、うまくやっていきたいと願うことでしょう。いただいた信頼を裏切らないよう、きっちり成果を出したいとも考えます。その関係性こそが、21世紀型知識労働者と組織の在り方ではないか、というのが本書が伝えたいことだと考えています。

強制的に施行するものではない

最後に補足すると、リモートチームという働き方を *強制* するのは、よろしくないでしょう。ライバル企業のどこどこがリモートワーク/リモートチームを始めたので、慌てた経営陣が、当社もはじめるぞ!と宣言する、といったストーリーには無理があります。これは一過性のブームではなく、20世紀型から21世紀型への働き方の変革という大きな枠組みで捉えられますので、リモートチームが実現できるように会社組織をつくりなおすという気持ちで取り組まれると、うまくいくのではないかと思います。

この本がきっかけとなって、多くの企業で知識労働者のワークライフバランスを重視する取り組みがさらに活発化されることを期待しています。倉貫さん、著作は大変だったと思いますが、おつかれさまでした。前作につづいて、社会に一石を投じる良書になっていると思います。

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